山ちゃんヒラメを釣る ヒラメ釣りテクニック編 ( 

(1)
辺りは霧で何も見えない。 多分視界は50mあるかどうかだった。
ボートに同乗しているS氏とH氏が言った 「霧が濃いから危ないね・・・」と。
山ちゃんは「大丈夫だよ、気をつけるから」と答えたが内心は「これはやばいどこから船が来るか分からない」と思っていた。
場所はサンデーフックの湾内である。時は5月の末であった。
今日はいつもの釣り場よりも湾の中央部まで遠征して出て来ていた。
ここにはアトランティックハイランドからニューヨークに向かうフェリーボードの航路がある。
霧が濃いのでフェリーボートも警笛を鳴らしながら運行しているので注意していれば近づいてくるのが分かった。
S氏もそのことを心配して言っていた。
その時だった。
「ブオーン、ブオーン」という警笛がかなり近距離で鳴った。
フェリーが近づいて来る音だった。
距離は100mあるかどうか。しかし、方向が分からない。
前か、後ろか、横か・・・。
「ボートが来るよ!」 S氏が再度言った。
「うん、分かってるけど・・・」と山ちゃん。
「どっちから来るか分かりますか?」と聞いた。
「あっちじゃない」とS氏がその方向を指差す。
H氏は「そっちだろう」と違う方向を指指す。
山ちゃんは「やばいな!みんな分かってないからな・・・」と思った。
というのは、山ちゃんが思う方向とはどっちも違っていた。

「ブオー、ブオー」
また警笛がなった。
「近いよ!」S氏が言う。
「うん、近いな!」H氏も言う。
どっちからボートが来るか分からない。
霧で四方がまったく見えないから現在地が分からない。
晴れていればそんな問題はまったく無い。
フェリーの航路は簡単に分かるのだが・・・。
今は自分たちがどこにいるのかさえも分からなくなっている。

「ブオー、ブオー」
また鳴った。
今度の音は相当近くなっていた。
「やばいな、こっちへ向かっているぞ」と山ちゃんは内心思った。
「どっちに逃げようか?」と思いつつも、どっちに逃げて良いか分からないのである。
二方向だけ逃げてはまずい方向がある。
それはフェリーボートの進行方向と同じ方向とその逆である。
フェリーのスピードは15ノット、自分たちの船外機付きボートは最大でも10ノットも出ない。
同じ方向に逃げたら後ろから追突され、ましてやフェリーに向かって行く訳にはいかない。
フェリーの進行方向と直角の方向に逃げなければならないのである。
さっきから自分たちのボートは停止状態でフェリーの通過を待っていた。
フェリーが近くに来ればどっちの方向から来るかが警笛で分かる。

「ブオー、ブオー」

「やばい、近い!」と言いながら山ちゃんがハンドルを左に切ると同時にエンジンのアクセル一杯にふかした。
左に逃げようというのであった。
とにかく、スピードを上げて逃げるしかない。
あとはフェリーが左に曲がることがないように祈るだけだ。

「ブオー、ブオー」
という音と共に「ザアーッ」っという波しぶきの音までしてきた。
「近い」確かに近い。
黒い影がすぐ近くに迫っていた。
レンタルボートは水面から1mも高さがない。
相手のフェリーは何倍の高さがあるか分からない。 多分、最高点は10mではきかないほど大きいのである。
「やばい!」と山ちゃんは思った。
フェリーが20−30m左側をほぼ同じ方向を目指して進んでいるのがやっと見えた。
フェリーも左に舵をとっていたのである。
「このままでは横波を受けてひっくり返る」と判断した。
フェリーは高速で通り抜けるからだ。

山ちゃんは今度は舵を右に目一杯切った。
フェリーから離れるのが第一目的であると同時に横波を避けるため右旋回をして波に直角に向かう必要がある。
S氏も、H氏も声を出している場合ではなく黙っている。 声も出ないといったほうがいいだろう。
運はボートに乗る前から山ちゃんに任せている訳だから。
フェリーは左前方を波をけたてて通り抜けて行った。
が、次に大波がこちらに向かってくるのだ。
山ちゃんは右旋回してその波に正対しつつあった。
「かなりの波だな・・・ 大丈夫かな?」と心配になった。

「行くよ〜、波に突っ込むから濡れるかも知れないよ・・・」
エンジンのアクセルはほとんどアイドル状態で波が向かってくるのを待ち受けるのだ。
「ザザアー、ザザアー」と音を立てながら波が向かってくる。
波長4m、振幅1.8m。
「ザッブン〜、バッシャアーン」第一波がボートの舳先に当たり砕ける。
ボートの舳先は30度以上の角度で空を向く。
波しぶきが夕立のように3人の頭上に降りかかった。
今度は舳先が下がる、下がる、海中に突っ込むかのように。
何もする手立てがない。 ただ、ボートを波に正対させておくだけだ。

波長が短いと舳先が下を向いたままの状態で次の波に襲われる。
こうなると舳先がそのまま波のなかに突っ込んでしまう。
ボートは浸水する。


2に続く

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