大漁タイムズ特選記事 (まさか?の36匹 鬼門のナバシンク)



 続 Tairyo Times
Nov29 1991
(第三種郵便物不認可)
発行責任者 真古家令
新記録続出  92年フランダーシリーズ

「まさか?休みじゃないだろうな!」
「ヤバイなあ〜」
ヤマちゃんはモンマスカウンティー、ラムソンのボート屋に着いた時にそう思った。
「ここまで来て帰る訳には行かないなア」
「最悪の場合はシャークリバーという逃げ道もあるが、シャークリバーはどうもなあ」
読者の皆さんはもうすでにお分かりと思うが、ラムソンのボート屋が空いていないのである。
朝6時半にここに来るには家を5時に出なければならなかったのである。

橋の上から見るナバシンクはベタ凪とはいえないまでも「自動こずき」にもってこいのさざなみであった。
「6時開店」のボート屋が6時半になっても開いていないのである。
イヤな予感がしたが、「まあしょうがない。シャップスに行こう」と決意した。
「シャップスなら行き帰りに40分の時間をロスするな」
「しかし、山の下のポイントも探れるし。まだ2,3ヶ所以上のポイントもあるしな。」

シャップスに着くのに10分と掛からなかった。
着いてビックリ玉手箱とはこのことであろう。
ボートというボートは全て陸上にあった。
「随分面倒なことをするなあ」
「陸に上げておいたら水に下ろすのに手間が掛かろうに!」
この時点ではまだ商売を止めていることに気がついていなかったのである。
シャップスのガスステーションが開いていたので、そこで働いていた若者に聞いた。

まさかとは思いながら、今見た状況から出た言葉は"Don't you rent a boat, any more?"
帰って来た言葉は期待に反する"NO"であった。
「やばいなあ」
ラムソンがダメ、シャップスがダメとなれば後は2つの選択しかない。
シャークリバーに行くか、家に帰るかである。
賢い選択は、もちろん「家に帰る」ことである。
そうすればエサ、チャム等の費用30ドルの無駄で済む。
シャークリバーでボートを借りて50ドル、それでも何等の保証は無い。
80ドルでカレイ1匹か2匹ではさすがのヤマちゃんも「何等問題は無い」などとは女房、子供の手前言え るものではない。

車は家に向かったかに見えたが、いつのまにかラムソンのボート屋の前に来ていた。
「もしかしたら・…」と思っての行動であった。
脳より体が勝手に判断していた。
ラムソンボート屋に着いたとき2人の若者が開かずの店の前で待っていた。

ヤマちゃんはその若者に言った。
「君達はボート屋が開くと思うかね?」
「俺は6時から開くはずの店が7時を廻ってもあかないので、今日はCloseだと思うよ」
自分で期待していることと逆の言葉がポンポン出てきた。
ヤマちゃんは頭に来ている様子がありありだった。

ヤマちゃんは自動車電話のスイッチを入れた。
そして、1-908-555-1212のボタンを押していた。
今までヤマちゃんは休日に私用電話をかけたことはほとんど無かった。
このときは「私用もへちまもあるか?3ドルでも5ドルでも構うもんか」という心境であった。

目の前に有るボート屋の番号を聞こうというのである。
何とも矛盾した話であると思われるかもしれないが、この手の店は夜間は自宅に電話を転送するケース があるので「もしもそうならボート屋のオーナーの所に電話が行くはずだ」と考えた。
アメリカに6年いても、10年いても英語は勉強しなければ上達しない。
「オーシャニック・マリーナ」では通じない。

「オーシアニック・マリーナ」であると言われた。 また、「ラムソン」は「Ramson」ではなくて、「Rumson」であるとしつこく言われた。
とにかく番号案内嬢(老婆だったが)は番号を教えてくれた。

「いっちょ、掛けてみるか」
ヤマちゃんはSNDボタンを押した。
すると二人の若者のうちの一人が突然店のガラス戸に耳を当てて聞き耳を立てた。
店の電話が鳴っているのである。
留守番電話のメッセージが流れ出したので電話を切った。
ヤマちゃんは車のドアーを開けて二人の若者に向かって言った。
「今、電話のベルが鳴ったのが聞こえたろう?」
二人の若者は呆気にとられた顔をしていた。
「コイツ、アホと違うか!? 店に誰もいないのを知っていて電話してるよ」とでも言いたそうな顔 つきだった。
ヤマちゃんは言った。
「ちょっと来てこのメッセージを聞いてくれ」
「Thanks Giving Holiday なのか Holidays ナのかが聞き分けられないんだよ」
一人の若者が来たところでヤマちゃんはもう一度SNDボタンを押した。

6年いても10年いても英語は自然に覚えられると思ったら大きな間違いである。
覚えられるとしてもF■■Kとかその手の下卑た言葉だけである。
しかし、ヤマちゃんは「だから英語の勉強をしよう」と思ったことは無い。
メッセージを聞き終わった若者は言った。
「Thans Giving Holiday だ!!」
ヤマちゃんは「それなら今日はどうなっているんだ!?」と思った。
その時だった、1台のくたびれたピックアップトラックが店の前に止まった。
運転手の顔には見覚えが有った。

一週間前のフランダー初戦の時にボートを貸していた店のボスだった。
二人の若者はそのとき分かったのだがアルバイトの青年だった。
「それならそうと最初から言え!」
とヤマちゃんは思ったが、同時にに最初に彼らを見たときに「君等もボートを借りに来たのか?」とひと こと聞いてみれば余計な手間隙を掛けずに、ただ店が開くのを待っているだけでよかったのだ。
ヤマちゃんはそういうところがそそっかしいところなのである。

店のボスは「Everything my fault」と言っていた。
時すでに7時半だった。
全くFaultだよ!
ヤマちゃんはその時「やれやれ」と思ったが、「やったあ」とも思ったかは記憶に定かではないが、 とにかく「家にも、シャークリバーにも行かなくて良くなった」と思ったことだけは確かだった。
ヤマちゃんがボートの手続きをしているとき電話が鳴った。
店の外には誰もいなかった。今度は。
店のボスは電話の相手に「良く釣れてるよ。一人で26匹釣ったのがいるよ」と言っていた。
「一週間前も同じことを言っていたな!」とヤマちゃんは思った。

40ドル+2ドル(笛代)を払って手続きは終わった。
二人なら50ドル+2ドルである。
ヤマちゃんは何人で借りても50ドル+2ドルと思っていたのでちょっと得をした気分になった。
52ドルを覚悟していたのであった。
例によって彼の荷物は1回では運び切れないので2回に分けて運びボートに乗った。
先程の若者がボートの準備を終えて待っていた。

今日のエンジンは先週のものと比べて音は静かで回転も滑らかである。
ナバシンクリバーにはまだ一隻のボートも出ていなかった。
ヤマちゃんは通称「15フィートのポイント」にボートを向けた。
途中で丸秘の魚群探知機をセットした。
5フィート、7フィート、9フィート。
ポイントに近づくにつれ深度が増すのが一目瞭然である。
「今日は勝負だ!」
と彼は考えていたので何も迷うことなく第一本命のポイントへ向かった。
しばらくして15フィートの水深を確認したところでアンカーを下ろした。

時は8時、潮は10時の干潮に向かい下げである。
風は微風、気温55度F。
ベストコンディションであると思った。
アンカーを下ろし、チャムカゴを下ろした。
すぐにタックルの組み立てが始まった。
今日は一人のため竿は4本を用意した。
ザ・カレイ・カーボン、電光石火、まだ命名していない竿(今日が初陣のため)、そして今日の勝負の ために昨夜完成したフライロッドと通常ロッドのミックスタイプの4本である。
この4本の祖は悲劇の竿となった。
昨夜の10時に完成し12時間後には帰らずの竿となろうとはヤマちゃんもその時点では知る由も無かった。
「カレイにもって行かれた竿」である。

1本の組み立てが終わると投入し、次のタックルを組み立てる。
2本目が終わり投入して、3本目の組み立て中だった。
「来た!!」
組み立てを中断しカレイを取り込む。
「ウム、今日は調子が良いかな」
とヤマちゃんは思った。
取り込んだ竿に針をつけて投入。
3本目の組み立てを終わり、4本目の組み立て開始。


 
【まだまだつづく2ページ】


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